構造溶接解析(CalculiX)による 移動熱源 の考慮

溶接などの急加熱・急冷却を行うと、大きな応力が作用し、恒久的な残留ひずみが発生する場合があります。このような現象を再現する場合、物性としての塑性などの基本機能に加えて、熱源をモデル化する必要があります。ここでは弊社で実装を行っている 移動熱源 について説明します。

体積発熱機能(*dflux – BF)

CalculiXには指定した要素に対して、発熱を模擬する機能があります。発熱は単位体積・単位時間当たりのエネルギー量として指定します。

右図は、一辺0.1 mの立方体に対して一様に1000 Wの発熱を与え、1秒間加熱した際の温度分布です。立方体の体積は1.0×10-3 m3で、指定する単位体積・単位時間当たりの発熱量は1.0×106 W/m3で、与えたエネルギー量の合計は1000 Jになります。アルミのような材料を想定して、熱容量はρcV=2467×450×0.001=1.11×103m3とした場合、温度の上昇は0.9007°Cです。図は、初期温度を20℃としており、シミュレーション上の温度の上昇幅は0.9008℃で、理論値との誤差は約0.01%でした。

図ではヘキサ二次要素を使用していますが、一次要素やテトラ要素を使用した場合も同程度の誤差で精度よく加熱を評価しています。

この加熱機能は、dflux.fという公開サブルーチンを介して、ユーザが発熱量をプログラム可能で、時間的な変化や移動する熱源を模擬できます。

体積発熱機能(*dflux – BF)_CulculiX

 直方体の板に円形の熱流束を一定時間与えて、その後熱を均一に拡散させた解析を行いました。熱流束はdflux.fサブルーチンを使用して指定しました。右図は加熱時間が経過したときの温度分布です。トータルで入るエネルギー量を理論値と比較したところ、おおむね0.5%以内の誤差で評価できます。ただし、円形の熱流束の場合は、要素の分解能として、直径の20分の一程度の代表長さで分割するとよい結果が得られます。

体積発熱機能(*dflux – BF)_CulculiX_温度分布

熱源経路の自由な移動

体積発熱機能(*dflux-BF)の機能を使用して、弊社ではCalculiXの熱源機能に拡張を施し、レーザ熱源のような簡易熱源を考慮できるようにしました。

例えば、次の図は渦巻き状の移動経路を想定し、薄板を加熱した際の温度変化です。

体積発熱機能(*dflux – BF)_CulculiX_熱源経路の自由な移動

移動の指定には、熱源の初期座標と、移動速度の時間変化のテーブルを使います。複雑な動きは時間対速度を記述したcsv形式の外部ファイルを利用し指定します。設定に必要な速度の時間変化がわからない場合は、移動経路と軌道上の速さから、向きを持った速度の時間変化に変換します。移動熱源は複数設定することができます。