亜鉛めっき鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ

亜鉛がコーティング(めっき)された鋼材を上下に重ね、レーザ溶接により接合する実験とFLOW-3D WELDによる数値シミュレーションを実施しました。

実験を行うにあたり、予てから問題として提起されている内容は以下の通りです。

  • ギャップ無しで亜鉛めっき鋼材をレーザ溶接する際、亜鉛めっきが蒸発し、発生した蒸気が接合面に蓄積されます。
  • 通気溝(ギャップ)が存在しない場合、亜鉛の蒸気が発生し続け、鋼材の溶融池内部に取りまれてスパッタの原因となります。
  • 亜鉛蒸気はキーホール動力学と過程の安定性にも影響を与えます。

FLOW- 3D WELDにおける数値モデル

厚さの異なる母材(上部;0.65mm,下部;1.2mm)を上下に重ね、レーザ溶接により接合します。溶接線は、(a)直線と(c)螺旋の2種類をモデル化しました。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_数値モデル

実験とモデルの設定: (a) レーザ照射の設定, (b) FLOW-3D WELD モデル設定, (c) レーザ螺旋溶接の設定 (d) レーザの螺旋溶接線

溶接の現象として以下の現象を考慮しています。

• 相変化(溶融、凝固(収縮)、蒸発(a.蒸発反力、b.熱損失と質量流量))

•  溶融時の流動

•  レーザ照射(フレネルの式、多重反射)

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_物理現象概略図

亜鉛めっき鋼材のレーザ溶接において発生する物理現象の概略図

※プラズマやプルームの効果は境界条件として限定的に考慮されています。

 ※図中の赤文字の現象については、直接的には解析していませんが、関連する解析結果などから検討しています

モデル検証

直線状の溶接線における実験と解析の横断面を比較しています。各溶接条件において、実験と解析が精度良く合致していることが確認できます。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_解析と実験の溶接断面の比較

解析と実験の溶接した横断面の比較: (a) Q = 3.9 kW, v = 8.5 m/min, defocus = 0 mm;  (b) Q = 5.0 kW, v = 8.0 m/min,
defocus = 0 mm; and (c) Q = 3.9 kW, v = 7.0 m/min, defocus = 10 mm

螺旋状の溶接線における実験と解析の横断面を比較しています。各部位での溶融幅が、それぞれ良い一致を示しています。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_螺旋溶接における断面比較

螺旋溶接における (a) 実験 (b) 解析 の横断面の比較

プロセスの動力学

溶融とキーホールが接合面を横切る際、蓄積された高圧の亜鉛蒸気がギャップの溶融表面で発生し、壁面でのキーホール圧力を圧倒して、その結果スパッタが発生します。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_プロセスの動力学

母材上面における各時間に対応した高速度画像と計算の比較:
(a) t = 1 ms, (b) t = 3 ms, (c) t = 7 ms, (d) t = 25 ms, (e) t = 150 ms, (f) t = 190 ms  コンタは溶融領域

溶接プロファイルの改良

レーザにより母材に注ぐエネルギの時間テーブルにおいて、0.00.05s62.5J/mに、0.125sからは22.5kJ/mを保つよう変更しました。またエネルギ分布は、初期の62.5J/m時には下側の鋼板も貫通するようスポット径を絞り、後期の22.5kJ/m時には上部の鋼板のみ貫通するようスポット径を大きくしました。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_溶接プロファイルの改良

提案する(新型)プロファイル: (a) 時間テーブルによる長さ当たりのエネルギ (b) 臨界の線エネルギの概略図

真上からの溶融図と横断面をそれぞれ比較しています。旧型(a,b,c,d)はスパッタが発生し、実験では横断面から母材が大きく欠損しているのが確認されました。一方のプロファイルを変更した新型(e,f,g,h)は、滑らかな表面が形成され、横断面において良好に接合されているのが確認されました。

溶接接合_亜鉛メッキ鋼材におけるレーザ螺旋溶接でのスパッタ_新旧溶接プロファイルの比較

新旧の溶接プロファイルの比較(表面形態と横断面): (a), (b), (c), (d) は旧型(original) (e), (f), (g), (h) 新型 (proposed)

まとめ

  • 溶接面における瞬間的な亜鉛の高圧により、溶融池が変動しスパッタが発生しました。
  • 計算された溶接面での亜鉛の蒸気圧はスパッタ形成の指針となり、溶接プロファイルの設計する手引きとなり得ます。
  • 当初の螺旋溶接におけるエネルギでは、亜鉛蒸気圧の増大を回避するには限度があり、レーザが接合面上を通過して突き抜ける際、深刻なスパッタが発生していました。
  • これらを踏まえて、溶接プロファイルはスパッタが発生する領域で亜鉛の蒸発圧を低減させ、適切なキーホールの開口が持続するように再設計されました。

【参考文献】

Shengjie Deng, Hui-Ping Wang, Fenggui Lu, Joshua Solomon, and Blair E. Carlson, Investigation of spatter occurrence in remote laser spiral welding of zinc-coated steels, International Journal of Heat and Mass Transfer, Vol. 140, pp. 269-280, 2019. doi: 10.1016/j.ijheatmasstransfer.2019.06.009