Case Study

はんだゴテのコーティング工程における変形と応力解析

ここでは、はんだゴテを使用し、AEC-Q101車載ガルウィングチップのリード線にはんだ付けする工程の熱応力解析についてご紹介いたします。

はんだゴテのコーティング工程の課題

はんだゴテを使用し、AEC-Q101車載ガルウィングチップのリード線にはんだ付けする工程の熱応力を解析します。解析において想定する条件および着目点は以下の通りです。

  • ガルウィングチップのリード線の回りにはあらかじめ固相のはんだを配置
  • はんだゴテを用いて、はんだ部の上にはんだ材を追加し、加熱・溶融・凝固させ、接続部を補強

→ コテを使用したはんだ付けの過程で、はんだ部はどれだけ溶融するか?
→ 冷却過程でどれだけ接続部と周辺部材の強度に影響するか?
(→はんだのフィレット形状の強度はどうなるか。)

車載機用のガルウィングチップ

車載機用のガルウィングチップ

はんだ付け後のレントゲン写真

はんだ付け後のレントゲン写真

はんだ部の疲労亀裂

はんだ部の疲労亀裂

解析モデル

まずFLOW-3Dを使用し、はんだの流動を解析します。その結果としての変形形状を取り出し有限要素法モデルに置き換えます。さらに、F.SAIモジュールを使用してFLOW-3Dの結果としての温度を取り出し、FEMの初期条件とします。FEM法による冷却過程の応力・強度解析の条件として、FLOW-3Dの最終温度から20℃まで冷却した場合を解析します。FEM法の結果として、リード線・はんだのそれぞれにおける応力分布と、プリント基板部分に作用する反力の時間変化を評価します。

FLOW-3Dの解析モデルは下図右上のようにします。リード線とプリント基板の間にやや低温のはんだを配置します。さらに上から高温のはんだゴテを使用し、高温のはんだをリード線に押し当て、はんだと熱を供給します。初期で低温のはんだも溶融し、供給した高温のはんだともにフィレット形状を形成します。FLOW-3Dの解析では、はんだゴテは移動物体の機能を使用し、解析時間の3秒間押し当て、その後引き上げます。

FEM法の解析モデルは右下の図のようにします。リード線のチップとの接続部分の先端で固定し、かつ、はんだ底面の基盤と接している箇所を固定とします。リード線とはんだは別々の物体としてモデル化し、別の材料物性を与え、接している部分はTIE結合モデルを適用します。

解析モデル図

解析結果

解析結果として、図の項目を評価します。

このうち、冷却過程の応力分布・変位分布はひずみゲージを使用することで、基盤の反力変化は反力センサを使用することで実機の結果と比較できます。

加熱工程

固相変化の動画と分布
温度変化の動画と分布

冷却工程

応力分布 検証方法:ひずみゲージ
変位分布
基盤の反力変化グラフ 検証方法:反力センサ

F.SAI (FLOW-3D Structural Analysis Interface)

構造解析メッシュの情報とメッシュの図を示しています。メッシュ作成の際は計算精度を確保するため、アスペクト比を5以下に設定しています。

また、F.SAIを使用して下の図のように流体解析を構造解析を連成させています。つまり、「課題」の項で言及したように、流体解析モデルの結果からの溶融状態のはんだ部の形状を、有限体積法の直交構造化メッシュから有限要素法のメッシュへ変換します。また、FLOW-3D Structural Analysis Interface (F.SAI) モデュールを使用して熱流体解析の結果としての温度分布を、有限要素法のメッシュに配置することによって、はんだ部とチップの冷却工程における強度解析の初期条件として使用します.

なお、F.SAIを使用すると、流体解析結果として圧力を取り出し、構造解析の条件に設定できますが、今回は流体の圧力よりも熱ひずみによる応力が支配的であると見込まれるので、圧力の結果は構造解析には使用しません。

fsai

固相変化の動画と分布

動画は固相率分布の変化を示しています。赤が凝固している領域、青が溶融している領域です。

はんだゴテの温度により、2.57 秒までにはんだが十分に溶けていることがわかります。

温度変化の動画と分布

動画は、温度分布の時間変化を示しています。

赤色の領域が高温、青色の領域が低温です。加熱後、はんだごてを話したのちに温度が下がり、6秒の時点ではんだ部の表面温度は約188℃となります。構造解析では初期条件として、F.SAIにより、流体解析の最後の温度分布を取り出して使用します。

CalculiXによるはんだ部の応力分布

CulculiXによるはんだ部の応力分布の時間変化を示しています。

動画では27 MPa以上の領域を赤色で示しています。ハンダとチップの接触面で赤く表示されています。今回、常温におけるはんだの降伏応力を27 MPaと設定していますので、接触面において降伏応力に達していると言えます。

CalculiXによる半導体リード線の応力分布

動画は半導体リード線におけるミーゼス応力分布の時間変化を示しています。

動画では217MPa以上の領域を赤色で表示しています。材料としては鉄を想定しており、許容される範囲内の応力となっています。

変位分布

図は最終時刻のz方向の変位分布を示しています。形状は50倍に強調して図示しています。

z方向負の向きに最大の変位となっているのは冷却されたはんだの周辺で-0.00067 mm (0.67 μm)であり、収縮によるものと判断できます。

正の向きの最大変異はリード線のチップよりで約0.0002 mm(0.2 μm)あり、固定したチップと収縮したはんだに引っ張られたことによるものと判断できます。

CalculiX_solder_変位分布

基盤の反力変化グラフ

冷却過程におけてリード線のチップ側と、基盤に作用する反力を、方向別に比較しています。これらの箇所は、解析において固定の境界条件とした所です。グラフの通り、各所の反力は互いに反対向きで、大きさが同じであり、構造解析の計算が安定的に解かれていることを確認できます。

基盤に作用する反力は最大で1.2 Nです。基板上に多数のチップのはんだ付け箇所がある場合は、この数倍の反力が合計で作用するので、設計上は注意が必要です。

CalculiX_solder_基盤の反力変化グラフ

まとめ

本例題ではガルウィングチップの リード線に対してはんだゴテを使用してはんだ付けを行った際のはんだ形状の変化および熱応力の変化をFLOW-3DおよびCalculiXを使用して解析を行いました。図は最終時刻における各部品の応力分布です。

流体解析の結果としての、はんだの形状や温度・圧力分布を、構造解析の条件として引き渡す例として示しました。また、流体解析結果としての形状は、今回は省略しましたが、振動・周波数解析や疲労解析に使用することもできます。

このような解析によって、使用するはんだの量やはんだゴテの動かし方の検討に使用できるでしょう。

各部品の応力分布