Case Study

リフロー方式 はんだ付け 工程における変形と応力解析

(熱流体と固体の連成モデル)

ここではリフロー方式はんだ付け工程における変形と応力解析についてご紹介いたします。

はんだ付け工程のリフロー方式の課題

はんだ付け工程のリフロー方式は、プリント基板上にはんだペーストを印刷し、そこに部品を乗せ、熱を加えてはんだを溶かす工法です。はんだペーストは、はんだの粉末にフラックスを加えて適度な粘性にしたものです。

リフロー方式における不良としては、加熱工程のものと冷却工程のものに分けて考えられます。

加熱工程においては図のようなチップの立ち上がりの不良が発生します。この現象は熱流体解析をもちいて、表面張力の不均衡を考慮することで再現できます。

 一方冷却工程の不良としては、図の右のように、チップやはんだに亀裂があります。

例えば、加熱工程後の冷却工程において、はんだ付けした部品の温度をピークの230℃から室温の20℃まで変化させると、熱収縮によりチップや凝固したはんだが損傷する場合があります。

ここでは、冷却工程における熱収縮による応力を評価し、チップやはんだの損傷を予測する例を示します。

 直交格子の有限差分法(FDM)に基づく熱流体モデルの結果から溶融状態のはんだ部のフィレット形状を、有限要素法(FEM)のメッシュに変換して構造解析を行います。

熱流体解析結果としての温度分布は、構造解析における初期条件の温度分布として使用します。その際、F.SAI(FLOW-3D Structural Analysis Interface)モジュールを使用して温度分布を抽出します。

表面実装とリフロー方式のはんだ付け
加熱工程の不良(熱流体モデル)
冷却工程の不良(熱流体と固体連成モデル)

解析モデル

FLOW-3Dを用いて、加熱工程の熱流体解析を行いました。はんだは溶融凝固可能な流体としてモデル化し、チップは並進移動可能な移動物体(GMO)として解析しました。なおGMOモデルでは物体の回転も考慮できますが、計算負荷を軽減するため今回は並進のみ有効としています。

 ハンダ・基板とチップの初期形状は図のようにモデル化しました。全体の初期温度は215℃として、雰囲気の温度を230℃まで上昇させ、はんだを加熱します。

 FLOW-3Dの解析結果からはんだ部のフィレット形状と、移動したチップの形状を取り出し、構造解析用のFEM法のメッシュを作成します。

次にF.SAIでFLOW-3Dの解析結果の温度分布などのデータをFEM法のメッシュの要素に配置します。

 以上を構造解析の初期条件として、温度分布から室温まで冷却する際の部材の損傷・強度をFEM法で解析し、はんだ・チップ・基板への力学的な影響を評価します。

リフロー式はんだ付け解析モデル

解析結果

結果出力として、応力分布図、変位分布図、ひずみ分布図、反力曲線などを利用できます。

このうち、ひずみ曲線・変位・反力曲線は、実験においてひずみゲージ・反力センサなどを利用して測定し、比較することで量的な検証が可能です。

加熱工程

圧力変化の動画と分布
温度変化の動画と分布

冷却工程

応力分布 検証方法:ひずみゲージ
変位分布
基盤の反力変化グラフ 検証方法:反力センサ

F.SAI (FLOW-3D Structural Analysis Interface)

メッシュの情報とF.SAIの簡略化したイメージ図を以下に示します。熱流体解析モデルの結果のうち、溶融状態のはんだ部の形状を、直行格子による有限差分法(FDM)のメッシュから構造解析用の有限要素法(FEM)のメッシュに変換します。

さらにF.SAIモジュールを使用して熱流体解析結果の温度分布を有限要素法のメッシュに初期条件として配置することにより、冷却工程におけるはんだ部とチップの強度解析を行います。

なお、解析精度を確保するため、FEMメッシュのアスペクト比は5以下となるよう調整しています。

F.SAIによる温度データ検出の際は、FEMメッシュの節点の0.01 mm以内の温度を抽出しました。

Solder_FSAI_Mesh

圧力変化の動画と分布

動画はFLOW-3Dによる熱流体解析結果のうち圧力分布を示しています。F.SAIでは圧力分布を構造解析に引き渡すこともできます。

今回は液相状態の圧力が凝固後の残留ひずみ与える影響は無視し、構造解析には設定しません。

FLOW-3D_圧力変化

温度変化の動画と分布

動画はFLOW-3Dによる熱流体解析結果のうち、温度分布の変化を示しています。

最終時刻の温度分布を取り出し、構造解析の初期条件として設定します。

FLOW-3D_温度分布

CalculiXによる応力分布

今回の解析モデルでは、はんだ材の20℃における降伏応力を27 MPa、チップの降伏応力を400 MPaとしています。

 図では27 MPa以上の応力を赤色で示しています。チップ内部では27 MPaを超える応力が発生していますが、チップの降伏応力よりは小さな値ですので、危険な変形はありません。

(個別の部分の応力分布図は次項で示します。)

CalculiX_solder_応力分布

CalculiXによるはんだ部の応力分布

図ははんだ部の応力分布を示しています。はんだ材の降伏応力27MPaを超える領域を赤色で示しています。

一部は降伏応力を超えており、塑性変形する可能性があるとみられます。大きな応力が予想される領域は、実験における亀裂不良の発生個所と近く、解析により、よく再現されていることが分かります。

CalculiX_solder_はんだ部応力分布

CalculiXによるチップの応力分布

チップの降伏応力の400 MPaに対してチップ材の安全係数を2とした場合、安全応力は400 / 2 = 200 MPaとなります。

底面のエッジの一部において200 MPaを超えていますが、直線形のエッジ全体ではほとんど下回っており、許容範囲内に収まっています。(安全係数3としてより安全側に見積もる場合は、基準の応力が140 MPa程度で、解析結果の応力には注意が必要です。)

CalculiX_solder_チップ応力解析

時刻歴の応力分布の動画

  • 最大応力30MPaで表示している
  • 時刻歴での最大値:最終時刻におけるチップで213 MPa

  • はんだ部が降伏応力を超える時点:48/50ステップ(融点から常温への冷却過程のうち)

変位分布

図では変位量を400倍に強調した変形図に対して、全方向の変位絶対値(上の図)およびZ方向の上向きを正とした変位量(下の図)により色付けしています。変形図から、内部に回転するような荷重が作用していると推察されます。

Z方向の変位のみの分布図を実験のイメージと比較すると、チップ上面の解析上のたわみ量0.0004 mmの範囲の境界が実験における亀裂の箇所に似通っていることが見て取れます。このような変形により亀裂が発生する可能性に注意が必要です。

 実験におけるたわみ量は顕微鏡写真、三次元測定結果、レーザ距離計で確認できるため、解析結果の整合性をとるために使用できます。

CalculiX_solder_変位分布

基盤の反力変化グラフ

グラフははんだが接合している基盤(電極)部分にかかる、冷却工程による荷重の時間変化を示しています。

この荷重は重量を除くと最大で0.2 N程度でした。リフロー工程で基板上に50個のチップが同時にはんだ付けされると仮定すると全体で10 N程度となります。

まだ熱い状態の基盤の全体にこのような荷重が作用することになるので、基盤の強度とチップの配置密度によっては、この反力による問題に注意が必要です。

CalculiX_solder_基盤の反力変化グラフ

まとめ

本例題ではチップのはんだリフロー工程を例にとり、熱流体解析と熱応力構造解析の連成解析を行いました。
図はCalculiXによる解析結果の応力分布です。

解析結果の応力や変位を実験写真と比較することで、実験における不良の原因を推定することができました。

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